イリスがふと指でそっと掬い上げた
楽器の片隅に、ほんわりと転がり現れた、枯れた柔らかな光
いつ光となってそこにあったのか
その光を彼女が手のひらにとると
ふんわりと纏まっていたアイボリーの光は
穏やかな花の姿に変わる
乾いた色になった生花
それでもまだ
彼女はそれを薄い紅茶色の絹布の上にそっと置いた
特別な日ではない
いつもの日常
いつもの部屋
それでも、窓の外は見渡す限りの花々と緑、木々へと続く庭
その先には、いつもの東屋もある
いつもの日常
いつものルーチンから
少し外れたその時間
ゆっくりと風が抜ける
ふと
小さな蝶がふわりと空に現れて
その乾いた花に近づいては離れ
とまりはしない
触れはしないものの
どこか
優しい静かな空の音が
視線を感じて、横を見る
「蝶の夢ですね」
その過去の痛みは
枯れた色へと落ち着いてゆき
乾いた水は蝶をもはや殺すことはない
蝶は触れることはない
いつか触れることはあるか
それすら分からないけれど
それでも
夢に現れ
蝶は現れた
楽器の片隅で
柔らかに枯れたその傷は
いつかこの生きる世界からも消えて
また
生きる世界を生み出してゆく
夢の音 音の光
小説